煙の失敗談
長い間鉄道写真をやっていますと、誰しも失敗の一度や二度(そんなモンできくかっ!)はあるものですが、他の写真と違って被写体がほんの一瞬しかそこにいてくれないだけに、ダメージの度合いは大きいようです。特に蒸機の場合は煙の形、色合い、カマのテカり具合と、まず同じ写真が撮れることがないので、一瞬の失敗がまさに命取りになるわけで・・・。
自分が失敗したときに仲間が撮った写真を見せられて、「よかったよネ〜、この時!」「ウンウン、あの煙がさ・・・」なんて会話が目の前で始まると、ツラいやら悔しいやら・・・。と言って怒り出すワケにもいかないから、自分が失敗したことなんかオクビにも出さず、「そーだよね、よかったよネ〜、この日は。」な〜んてテキトーに相槌打ってると、突然「みかんちゃんはどんな風に撮ったの?見せてよ!」と突っ込まれてシドロモドロ・・・。「ウン、まだ紙焼きに出してないんだ。」・・・紙焼きに出したくても出せないくせに!この大ウソつき!
(HPで絵日記始めてから、このテは使えなくなりましたが・・・)
一緒に撮ったときの写真を「まだ焼いてない」と言って見せてくれない人は、83%の確率で失敗しています。ご参考まで・・・。
失敗といってもいろいろありまして・・・。
たぶん皆さんが経験しているだろう代表的なヤツからいきましょうか・・・。
1.フィルムの巻き忘れ
これはほとんどの方が経験しているのでは?
「これ経験しなきゃ一人前じゃないよ!」なんて負け惜しみ言ってる人もいますが・・・。
最近はモードラ、ワインダー全盛ですが、やはり一発勝負の構図を取らなきゃならない時もあります。(大体そういう時は自画自賛したくなるようなアングルで、内心悦に入っているときが多いです。〜イヤラシ!)それに中判カメラにはそんなケッコーなものはないのです。(最近645にはワインダー付が出ているようですが・・・)
キマった!と思った次の瞬間・・・スカッ!・・・「え?」・・・一気に奈落の底に突き落とされた気分。一気に気分はブルーになります。このショックは並大抵ではありませんヨ!甲子園の決勝戦で、9回裏痛恨のサヨナラエラーをしてしまった高校球児の気持ちが痛いほどよくわかります。遠ざかっていく汽車の汽笛が試合終了のサイレンに聞こえたりして・・・。
カンペキな巻き忘れのケースとは別に巻き上げ不良の状態、ということもありますね。(^^;)
こんな失敗を重ねると、どうしてもモードラやワインダーというものに頼りたくなるのが人情・・・。しかし、そんなものをつけても安心はできないのです。なぜなら・・・。
2.モードラ、ワインダーのスイッチ入れ忘れ
というのがありますから。スイッチ入れなきゃモードラもワインダーもただの箱。死重ですね〜。この失敗は意外と几帳面な人に多いようです。これらの機器はスイッチを入れっぱなしにしておくと電池の消耗が激しいので、大抵本番撮影の直前までスイッチを「OFF」にしておきます。で、直前で露出あわせに夢中になっていると、肝心なときにスイッチを入れるのを忘れてしまう・・・。ワインダーをつける人は「ここで切って、次はココ・・・」なんて欲張ったことを考えている人が多いです。ところがイザ汽車が来て、最初の1枚シャッターを切ったあとはレリーズに手ごたえがない・・・となるとアタマの中が真空化してしまいます。落ち着いてスイッチを入れればいいのですが、アタマがパニックしているので「あれ?あれ?」と言いながらただレリーズを押すだけ・・・ということになります。ひどい場合にはレリーズを破損したり、三脚を蹴飛ばしたり、という二次災害を起こす可能性もあります。まあ、ポカの最たるものですが、これらの機器は「故障」という不慮の事故に襲われることもありますので・・・。「手巻きワインダー」なるフシギなワインダー(恐ろしく電池消耗が早く、2〜3列車撮影するともう電池がなくなる・・・ただの不良品だと思うんだけど・・・)を使っている方もいますので・・・。
しかし、この逆のケース、つまりワインダーが回りだして止まらないとか、スイッチ入れてないのに勝手に回るというのも困りモノです。私は山口線の篠直でやられましたが・・・。雨天時など接触部分に水が入ったときなどに起こるようです。雨の時にはカメラの防水にはくれぐれも慎重に!ビデオの場合はちょっとでも水が入ればオシャカの可能性もありますから・・・。
3.カメラの裏ブタ開けちゃった!
「悲惨」といえば、これほどヒサンな失敗はないのではないでしょうか・・・。まさに極め付きの悲劇です。何せこれまでの苦労が一瞬にして水泡に帰してしまうのですから・・・。私も国鉄現役時代から何度もやっています。ああ、幻の写真・・・幻のC55、幻のD51重連・・・思い出すとだんだん気持ちが暗〜くなってくるので、この辺で・・・。
4.連写の途中でフィルム終了
ワインダー、モードラというのは便利なシロモノですが、フィルムの残り枚数を確認しておかないと、時としてイタイ目にあいます。自分がここ!と決めた前後で2〜3枚・・・というのならいいのですが、鉄ちゃんというのは欲張りな人が多く、画面に汽車が入ってくるとこらえきれずにシャッターを押してしまう人が多いみたい。「試し撃ち!」とかいいながら・・・。でも、1枚切ってしまったらもう歯止めがきかない。獲物に襲い掛かる肉食動物のごとく連写、また連写・・・カンジンのポイントに差し掛かったときには「あれ?」フィルムがない。(TT)
よく雑誌に「写すポイントは1箇所。あとは不要!」なんてもっともらしいこと書いてありますが、それは血の通っていないロボットの理屈ですぅ〜!あのコーフン状態があるから蒸機の撮影は楽しいのです。そして、あの煙が我々のコーフンを助長するのです!
もっともさすがに線路端で正面撮りをしているときには、この失敗は少ないようですが、コワイのは俯瞰撮影の時。特にスケールの大きい俯瞰になると・・・よぼど自制心がないと・・・。
5.フィルム入れてないのに一生懸命写し続けた!
いわゆる「カラ・フィルム」というヤツですね。(^^)
これもかなり悲惨、というか笑える失敗ですね。満足感に浸って撮影を終了・・・フィルム交換をしようとした瞬間の悲劇・・・。「今までの努力はいったい何だったんだ〜!」アタマを抱えてしまいます。思わず「諸行無常」などと口走って仏門に入りたくなります。(ひょっとして坊主頭で撮影をしている方は過去にこの失敗を多く経験された方?・・・失礼!)
フィルムカウンタが「38」を指してもまだ巻き上がるようなら・・・この悲劇が50%以上の確率で起きていますよ!
6.撮影地に忘れ物をした!
これもよくあるケースです。ちなみに忘れ物のベスト3は・・・
1.レリーズ
2.レンズキャップ
3.レベラー(水準器)
だそうです。〜国土交通省2000年度白書より(←ウソつけ!)
小さいもの、が危ないようですね。でも、中には三脚を電車の網棚に忘れたり、銀箱を宿に忘れて撮影地に向かったりする(・・;)ヒトもいるので世間は広いです。
私もときどき撮影地でレリーズを無くしてしまうことがありまして・・・でも逆にレリーズを拾うこともあって、ちゃっかり自分のモノにして使ってます。「今年はレリーズは●勝○敗」なんてバカなことを言ってますが・・・。しかし、空き缶やゴミなどの忘れ物は絶対にしてはいけませんよ!
7.フィルム感度の合わせ間違い
最近のAF一眼レフはDXコード対応で、カメラが自動的にフィルム感度を合わせてくれますが、我々の仲間内ではまだまだマニュアル機が主流。従ってこういう失敗もときたま起こります。複数のカメラを使用する場合、ほとんどのヒトはどのカメラに何のフィルムを入れるか決めているようですが、それでも時々「浮気」をしたり、撮影地でリバーサルが欠乏してやむなくネガ400を買って入れたりすると、この悲劇を招くことがあります。
「フィルムを入れたら指差喚呼」を励行しましょう!
8.一段絞るつもりが一段開けてしまった!
正面から煙を上げて蒸機が迫る!その時突然雲が晴れて、露出がハネ上がる。眼はファインダーを覗いたまま、指でレンズの絞りリングをつまんで露出修正・・・というのは誰しも一度は経験したことがあると思います。しかし、これもカメラが1台だけだと何ら問題はないんですが、数台のカメラを同時に使っていると時として悲劇を招くことがあります。
レンズの絞り値の表示はメーカーによってその方向が違います。ちなみに私は35ミリはキャノン、6×7はペンタックスですが、キャノンのFDレンズは左側が開放、しかしペンタックスは右側が開放なのです。これを同時に絞り修正しようとすると、悲劇がおきます。
え?カメラ1台だけで逆操作をしてしまった場合ですか?ご愁傷様、としか言いようがありませぬ。
9.俯瞰撮影で、視界が悪くなって何も見えなくなった・・・
これは「失敗」というよりもむしろ「不運」と言ったほうがいいのでしょうが・・・。(悪天候になるのがわかっていて山に登るおバカさんは別)
俯瞰撮影の素晴らしさは、雄大な景色を主役にしたスケールの大きい写真が撮れることです。特に秋から冬にかけて、澄み切った空気の中、いくつもの山の稜線の重なりをバックに白煙を吐いて進んでくる汽車の姿はまさに1枚の名画!私も俯瞰は大好きで函館本線の稲穂嶺、山口線のZ・スーパーZ・ハイZ・ミニZ・ヨコZ、磐越西線の中山峠などはよく登りました。
しかし、山の天気は急変しやすいもの。登り始める時は快晴だったのに、頂上についたらにわかに雲がたちこめて下界は乳白色の霧が・・・。もはや撮影地を変えることもできず、ひたすら天に祈るだけ。その祈りが通じて晴れてくれればいいですが、そうでなければただ白い世界に汽笛が響くだけ・・・。(こういう時の汽笛がいい音に聞こえるんですよね〜)
撮影地にたどりつくまでに相当の体力を使っているだけに、こういう目にあうと、気力がいっぺんに萎えてしまいますぅ〜!もう今から9年前、片道3時間かけて歩いていった(しかも午前中の列車を捨てて!)稲穂嶺の俯瞰で、私は汽笛だけ聞いて帰ってきたことがあります。帰り道の長かったこと・・・。
まあ、天候ばかりは不可抗力、という面もありますが、しかしフシギに「このヒトが来ると天気が悪い」というヒトがいるもんです。私の知り合いにも「サイコロ振って1が出ないと晴れない」(曇天率83%)というヒトがいます。(^^;) このヒトと一緒の時は必ずRMSを持っていくようにしてます。皆さん、俯瞰撮影に行く時は、同行者に気をつけましょう〜。
ちなみに私は典型的な「晴れ男」で晴天率83%です〜。(サイコロを振って1〜5で晴れます!)え?ネコが顔洗うと雨が降るだろうって?ほっといて!
10.撮影済みのフィルムを新品と間違えて二重写しした!
ついこの間、やってしまいました〜。(詳しくは3月分の絵日記見てね!)
これも悲しいです。現像アガリのポジを受け取りにルンルン気分で写真屋さんへ。ポジを受け取った瞬間に走る衝撃!(笑撃?)第一橋梁にマンモスフラワーのごとき巨大なヒマワリが生えている!猛煙を上げるC62にダブって背後霊のごとく友人の姿が写っている。非電化のはずの山口線に架線柱がたくさん写りこんでいる・・・。まさに「ウルトラQ」も真っ青の写真が出来上がってきます。同じフィルムを二度使いしたときのチョンボですが、フィルムの巻上げが不完全だと、部分的にダブリ画面ができることもあります。皆さん、撮影後のフィルムはきちんとベロを巻き取っておきましょう。
11.撮影地で迷子状態
地形図を頼りに初の撮影ポイントへ!(大抵俯瞰ポイントのことが多い)ところがいざ山の中に入ってみると、地形図には出ていない道が何本も・・・。ハテ左に行くのか、右に行くのか・・・?エイ、こっちだろうと決めて歩いていくと森は深くなるばかりで線路などカケラも見えてこない・・・。これは間違ったなと思って、さっきの分岐点に引き返すともう時間がない。やがて山あいに響く汽笛が聞こえてきてゲームセット。
この迷子、大井川や山口あたりでやる分にはまだ笑い話で済みますが(そうでもないカナ?)、北海道や東北の山深いところだとシャレではすまなくなります。最悪山岳遭難ということも・・・。初めての俯瞰ポイントに行く時はできれば単独行は避けましょう。登る時間にも充分余裕を取っておきたいものです。
さてさて、皆さんこのうちどのくらい経験してます?まだ他にもあるんですよ〜。たとえば・・・
12.撮影地でフィルム欠乏
13.エアレリーズ踏んづけてパンクさせた
14.列車ダイヤの読み違い
15.撮影中に自分の三脚蹴飛ばした
16.セルフタイマーの解除を忘れて汽車撮った
17.カラー撮影時にY2フィルターかけていた などなど。
え?よくこれだけリストアップしたなあって?
だって私はこの失敗全部経験してるんですから! どーだ、すごいだろー! (泣)
おまけ ミッドウエイ in 函館本線 1988
皆さんミッドウエイ海戦って知ってますか? 太平洋戦争のターニングポイントなんて言われてますが・・・。
圧倒的に優勢だった日本海軍、司令官が優柔不断だったばかりに不必要な雷爆転換(飛行機の魚雷を爆弾に積み替えること)をやったおかげで、時間を空費したうえに敵の急襲を受けて一気に4隻の制式空母を撃沈されたのです。
「指揮官が決断の時を逃せば、敗北以外の何者も得られない」(テレビアニメ「決断」ナレーションより)
これは鉄ちゃんの世界でも通用する教訓でした・・・。
皆さん、アングルを決めるとき、微妙な画角の違いに悩むことありませんか?85mmにしようか100mmにしようか、なんて・・・。ちょっとでも未練を残すとこれが命取りになることがあります。そう、こんなふうに・・・。
昭和63年、「C62ニセコが復活した年。私は6月の下旬、1週間の休暇を取って撮影に出かけました。6月の、それも平日とあって(このころはほとんど毎日運転されていました)、ファンはまばら。普段は三脚の林ができる「お立ち台」もパラパラと人が出ている程度。定番で撮るのはこの時とばかり、216.6キロの白樺バックのSカーブ(私は「グランドS」と呼んでましたが)に出かけました。この時はカメラは2台。1台は200mm縦位置の「お約束アングル」もう1台は汽車をSカーブの真ん中まで引っ張って周囲の緑を生かしたアングルにしようと思って手にとったのは135mm。これで決めてしまえばよかったのだけれど・・・なまじ時間があるのは困りもの。「この画角だとどうかな?」と試しにつけてみた100mmがまた捨てがたい!できれば両方ほしいところだけれど、「お約束」の200oは外すわけにはいかず、カメラは1台しかないわけでどちらかに決めなきゃならない・・・。悩んでいるうちに時間はたち、9162レ通過まであと10分。空は薄い雲に覆われ、木々の緑はちょっと沈んだ感じ・・・。「これなら列車主体にしたほうがいいな」とやっとのことで135mmに決断しました。
ところが・・・。通過数分前、雲が切れて日が差し始め、緑が明るくなる・・・9162レは通常、218キロポストの国道オーバークロスで長い汽笛を鳴らすはず・・・それがまだ聞こえないということは、まだ1分程度は余裕がある・・・はずでした・・・。
「よし、それなら100mmだ!」と135mmを外して銀箱に戻し100mmを手にとった瞬間、あのC62独特のジェット機のような走行音が!「そんなバカな!」と思いつつ、100mmをカメラ本体に取り付けようとするのですが、あわてているせいかうまくマウントロックできません。やがてC62が林のかげから姿を現しました。200oはこの「出っぱな」が勝負なので、まずそちらのシャッターを切る!と、その瞬間、私の左手から100mmがポロリと落ちて、クマザサの中にバサッ!・・・見事なまでの白黒まだらの煙を吹き上げて目の前を通過していくC62をなすすべもなく見送ったのでした・・・。
幸いにも我が100mmハクマザサの重なり合ったところに引っかかっていて、外側にもレンズにも損傷なかったのですが・・・。
まさに「運命の5秒間」だったのです・・・。
「人生で最も貴重な瞬間、それは決断の時である!」
この言葉を皆さんに贈ります。(^^;)
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